摂食障害リアル克服体験談

今現在摂食障害で苦しんでいる方に向けて、克服者がどのように治っていったのか、そして今どのように生きているのか、たくさんの事例を紹介します。

3.男性でも、ふとしたことから摂食障害になるんです(Mさん)

 

Mさん(男性・23)

大学生

 

プロフィール

健康学とスポーツ学を学ぶ大学3年生。国際交流やサッカー、フットサルが大好き。ファッションをこよなく愛し、下北沢によく出没する。

 

克服前

症状

非嘔吐過食、鬱、常にイライラ

 

ダイジェスト

期間

状態

休学①~大2 (1年)

健康的なものを過食

大2~大3の5月 (2年2ヶ月)

非嘔吐過食

 

人生曲線 

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原因、きっかけ

理想の自分(痩せてて古着を着こなしている)に比べた今の自分への自己嫌悪と栄養状態が悪かったこと(幼少期、高2の食事制限)が原因だったように思う。

 

家庭環境

母子家庭。母親は仕事で忙しく、おじいちゃんが育ててくれた。

食事は、三食ともファーストフードやスーパー、コンビニの惣菜などジャンクなものが多かった。炭水化物と肉類が中心で、野菜は嫌いだったため食べていなかった。常に母親の「手料理」というものに飢えており、母親が帰ってきて手料理を作ってくれるまでご飯を食べなかったこともあった。

普通の人が受ける家庭教育を受けてこなかった(毎日洗濯する、歯磨きの仕方など)。

また、姉が一人いるが、特に仲は良くも悪くもないといった感じであった。

母親とは仲良かったが、高2の怪我をきっかけに、今はないが、なぜ子供にジャンクなものを食べさせるのか、なぜ教育のためにお金を貯めないのかと責める気持ちがあった。

 

学校環境

【小学校】

軽いいじめ(はぶかれる)。運動神経がいいキャラ。サッカーを始める。  5、6年生になると自分のことは自分でやるように(毎日の洗濯など)。

 

【中学校】

サッカーに熱中する。勉強もそこそこでき、毎日充実していた。

 

【高校】

暗黒時代。病んでいた。サッカーを頑張る気満々で入学し、最初は調子が良かったものの、高2の怪我をきっかけに全てが上手くいかなくなり、鬱になる。周りからは軽く見られがちな肉離れなどの細かい怪我が続いたため、大好きなサッカーができないという辛さに加え、チームメイトの「あいつもう治っているのに怪我を理由にサボっているだけだろ」という陰口や目線にもう耐え切れなくなる。早く部活をやめたかった。

勉強にはまり、評定で5.0を叩き出す。「勉強の天狗」となり、それで自分を守っていた。周りに対してはとてもトゲトゲしていた。

 

性格

穏やか、基本的にあまり怒らない、ストイック、かっこつけ(とりあえずやるよりも、認められるように考えてやる)、完璧主義

 

ダイエット

小学校から興味はあったが、痩せたらいいなーくらいで、特にダイエットはしなかった。

しかし、高2の怪我を治すために始めた食事制限で痩せられるということに気付いてからは、常にどんな健康法もダイエットと結びつけて考えていた気がする。また、高2で痩せているキャラになってからは、それを死守したいという思いがあった。

 

その他

高2の食事制限

高2で怪我をして、怪我を早く治すために栄養のことを学ぶようになった。そこから1日1500kcalの徹底した食事にこだわるようになる。

朝:自分で手作り(野菜、米、卵など)たまに、パンを食べるのが楽しみに。

昼:母親に頼んで作ってもらったストイック弁当(ささみ、サラダ、米、こんにゃく、白滝)。たまに母親がカロリーの高いものを入れたときは怒る。

夜:ささみと白滝と野菜のお鍋をどんぶりで食べる。米はあまり食べない。

食べ物のカロリーは暗記しており、痩せられるということに自信を覚えるようになる。当然痩せこけていき、筋肉も落ちる。馬跳びのときなど、腕に全く力が入らなかったことも。

食事制限をおこなっている一方、たまに仲間と食べ放題などに行くと、常に飢餓状態だったため、ダントツで食べられた。

今思うと拒食に近かったのかもしれない。

 

ファッション好き

ファッションが好きなため、人一倍「痩せてかっこ良く服を着こなしたい」という思いが常にあった。また、人と異なる奇抜なテイストを好むため、「奇抜な服を着こなすには痩せていなければいけない」という思いがあった。

 

女性性が強い

女性性が強いのかもといわれることがある。母と姉という家族の中で育ったことが影響しているのかも。

 

認められたい願望

常に認められたい願望があった。

 

克服中

完治までのプロセス

健康的なものを非嘔吐過食(1年)→非嘔吐過食(2年2ヶ月)

 

各ステージでの、「食」、「運動」、「生活」、「メンタル」の大体の状態

健康的なものを非嘔吐過食 (1年)

教科書的な栄養学でなく、様々な健康情報を知る。

ナチュラルハイジーンという健康法にはまる(2ヶ月)。

朝:フルーツ

昼:サラダ、米

夜:サラダ、米、納豆など

 

徐々にルールの中で食べ過ぎるようになる(米や野菜の過食)。最初は週3くらいの頻度だったのが、どんどん増える。

また、ルールを破ってしまった日(卵、乳製品を食べたなど)は、逆にその食品を過食するように。

運動

週2,3でジム 

筋トレ

ランニング 

自転車

生活

早寝早起き 6時間は寝る

よく朝カフェで勉強していた

週3のバイト、英語の勉強、事業の立ち上げなどで忙しく過ごす

メンタル

スーパストイック。

時間管理表などをつけ、いかに時間を効率的に使うかを考えていた。

ある意味で楽しかった。

 

非嘔吐過食 (2年2ヶ月)

週3、4で過食。大体は夕飯を食べた後に過食

自分の決めた食べ方を守れないときに過食(ベジタリアンをしていたのに、肉を食べてしまった、など)

朝:りんご

昼:パン、豆乳、健康的なもの

夜:過食

 

過食するときは夜の6時から夜中の2時までなど、ずっと食べていた。

(オーガニックなど健康的な夕飯→定食屋→チョコ→スイ―ツ→カレー→ラーメンみたいな流れ)

どんどんお金がなくなる

過食が落ち着く食事を常に探し、一回その食事スタイルで落ち着いたらそれを守っていた。しかし、ちょっと落ち着いたと思うと、逆にそれを皮切りに何か食べ始める。(「落ち着いている、大福食べよう」みたいな)

常に悪者探しをしていた。(「あの大福が悪かったんだ」みたいな)

運動

食べ過ぎた日など、週1でランニング

途中から週1でドッチボール

生活

過食の次の日は

シェアハウスにいたとき:辛くても早起き

一人暮らし:昼まで寝る(食べずに済むため)バイトあっても休む

 

過食しない日→12時前就寝

過食する日→2時くらい

メンタル

過食があるかないかで一喜一憂する毎日。過食する度、また太ると自己嫌悪。自暴自棄な気持ち。「こんな俺で明日だれかと会うのか」と思っていた。周囲が体型の話をしていると自分が太った悪口を言われているような気がした。人に何気なく太ったといわれるのがかなり辛かった、「お前に俺の何が分かるんだ」と思っていた。

 

 

克服に一番有効だったこと

1.精神面にアプローチする

とにかく今の自分を愛する。

自分のことを愛していなかったが、妙に自分に自信はあった。

ただ、その自信というのは、理想的な自分に対しての自信であった。(「理想の自分」はこんなにかっこいい、すごい、という自信)

自分はそこばっかり見て、今の自分をないがしろにしていた。しかし、「理想の自分」と「今の自分」は2つの異なるものではなく、1つの連続したものであるため、いくら「理想の自分」を愛しても、「今の自分」にもきちんと目を向けて、愛さなければ、「理想の自分」にもなれないことに気付く。

「今の自分」でもできることもあるのに、「理想の自分」しかできないと決め付けていたことがたくさんあることに気付いた。(感性に自信があるけれど、感性を使っていきいきと活動できるのは理想の自分だけという決め付けなど)

また、尊敬する経営者の方の「今は〇、これからは◎」という考え方がとても腑に落ち、今の自分は×や△でなく、〇と捉えるように心掛けた。

2.体と対話する

『体に聞いてたべなさい』(リズ・ブルボー著)という本を読んで、実践した。

体の声を聞いて食べること、嘘でもいいから自分の体に「ありがとう」と声をかけて、感謝することを心掛けた。たとえ、過食してしまった日でも、お腹をさすりながら、「ごめんね、今向き合っているんだよ」と自分の体に優しい声をかけた。時には、過食後、夜中に泣きながらお風呂の中で声をかけることもあった。

 

3.とらわれ、固定観念をなくす

頭で考えて食べるのではなく、自分が食べたいものを食べてみる。

太ると思っているものも、「太るかもだけど一回食べてみよう」という気持ちで食べてみる。

また、「太っているから着れない」と思う服をあえて着てみる。(太っているから半袖は着てはいけないと思っていたが、思い切って着てみたら意外と気にするほどでもなかった)。

 

4.睡眠をとる

 

5.栄養的に満たされる食事をしてみる

 

6.ながら食べをしない

 

克服の転機となった出来事、重要だったこと

1.本との出会い

『体に聞いて食べなさい』(リズ・ブルボー著)という本を読んで、知識がちがちの頭で食べることから、体と対話して食べるようになった。

 

2.自分の過食の悩みについて話せる友達ができた

他の友達には、自分が健康について詳しいと思われており、健康について色々なことを聞かれる手前、その自分が過食に悩んでいるとは言えなかった。

しかし、その友達一人だけには素直に悩んでいることを話すことができた。素の自分をまるごと受け入れ、愛してくれて、とても安心することができた。

 

3.あらゆる健康法をやってもだめだった

ありとあらゆる健康法を試してもだめだったことで、やっと「心」へのアプローチが必要なことに気付くことができた。

 

4.シェアハウスに住んだ

メンバーが家族みたいな存在になり、とにかく自己開示(自分はほぼ野菜ばかり食べるよ、など)をして、それを受け入れてもらった。また、それと同時にだんだん自分にも柔軟性が生まれ(みんなが食べている肉も食べてみよう)、食へのとらわれが薄くなっていった

 

克服中に試したこと

上手くいったものも、上手くいかなかったものもあった。

・本を読む

・良いブログを探して読む(他の人の事例を見てみる)

・嘘でも今の自分を愛そうとしてみる

・食以外に熱中することをつくる

ベジタリアン

・オーガニック

・ナチュラルハイジーン

グルテンフリー

・断食

デトックス

酵素ファスティング

サプリメント(栄養を補う)

・いきなりGI値が高いものを食べない

 

克服後

現在の生活

朝:飲み物くらい(制限とかではなく、そっちの方が体が快適だから)

昼:定食や弁当

間食(したりしなかったり)、飲み物系(コーヒーなど)

夜:定食など(たまにデザート)

運動

週3くらいでランニング

最近走るのが楽しくなっている(義務ではなく)

「走ったら痩せそう」という気持ちは、普通の人並みにはよぎる

生活

朝6時から7時半に起床→カフェで勉強

日中は学校、バイト、友人と過ごしたり

6時間は寝るようにしている

メンタル

食べ過ぎた時はちょっと「食べ過ぎたかもなー」くらいで、別に落ち込まない。

ファッションも楽しんでいる。

とにかく今が楽しく、常に「次は何をしようかな」とわくわくしている状態。

また、とらわれなくご飯が食べられることに幸せを感じている。

 

ダイエット

もう少し痩せたい気持ちはあるが、特に急いでいない感じ。

「痩せよう」というより、「自然に痩せていくだろう」という気持ちでいる。

「痩せよう、ダイエットしよう」にすると、逆に上手くいかないことが分かっている。

普通の食事をして、後は趣味で走っていたら、まあ痩せるかなと思っている。

 

進路・人生の捉え方

自分の好きなことをやって、その上で人のために価値あることやろうと思っている。

今までは、どうしても自分の「食」が気になってできなかったが、やっとアクセルがかけられたという感じ。

 

現在の活動

古着屋アルバイト、新事業立ち上げ、スポーツ、服作り

 

まとめ

「治った」の定義

「治った」=「体重が減る」ではなく、「心の状態が良くなる」ということである。

同じ体重でも心の状態によって、病気か治ったかが決まる。

自分の場合は、過食のときから痩せたわけではないが、治った今は、自分の心の状態が全然違って、物事の捉え方や世界の見え方が病気の時とは全然違う。

治るということは、「今の自分をそのまま認めて愛し、今を楽しんでいること」だと思う。

結局全ては「心」である。

 

振り返ってみて

自分が辛かった最中は

なんで俺だけ。

みんな体験してみろ。

誰もわかってくれない。etc

いろんなことを思いました。

でも今思うと、本当になるべくしてなったというか、

体験できて良かったです。

食や自分自身と向き合うきっかけをくれたので、

かけがえのない体験です。

 

メッセージ

自分を愛してあげる事が一番だと思います。

もちろん栄養が足りていなければ、それもあるかもしれませんが、

一番は心だと思います。

 

今の自分じゃだめだ。

痩せたら~しよう。

と、するのではなくて、今の自分に○を出してあげる。

簡単な事ではないと思いますが、

最初は口だけでも良いので、

自分のからだに感謝したり、

今の自分を褒めてあげることが大事だと思います。

自暴自棄にならずに、

100点じゃなくても70点で良いやー!

という気持ちで過ごしてみてください。