摂食障害リアル克服体験談

今現在摂食障害で苦しんでいる方に向けて、克服者がどのように治っていったのか、そして今どのように生きているのか、たくさんの事例を紹介します。

2.うつ病から過食症に (野邉まほろ)

 

野邉まほろ(22)

大学生

 

プロフィール

7年間の摂食障害を告白したブログは、はてなブログのランキング入り。SNSやブログを通して出会った人は、これまで1000人を超える。現在はその人たちに直接会いにいき、一緒に「まほろと食べたいごはん」を二人で食べ、笑顔で「ごちそうさま」を言う、「ごちそうさまツアー」を企画し、全国をまわっている。

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わたしは「摂食障害」です

 

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克服前

症状

非嘔吐過食、下剤乱用、鬱

 

ダイジェスト

期間

状態

高1冬~高3  (約2年3ヶ月)

非嘔吐過食、鬱、下剤

大1春~大4冬 (約3年9ヶ月)

下剤をやめるが、非嘔吐過食、鬱

大4春~大4夏 (約1ヶ月)

ブログ書く、ほぼ完治

 

人生曲線 

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原因・きっかけ

高1の夏に出た不明熱に誘発され、鬱病になったことが原因。鬱病の症状で、過食をするように。

過食し増えた体重をどうしようと考えるうちに、ネットで見つけた下剤に手を出す。

「不明熱→鬱→病む→過食→下剤」という流れ。

 

鬱病になった原因

生活環境の変化。

高校入学に伴い、環境が大きく変化したため、毎日気を張って頑張っていた。

 

・島から出る

高校進学のため、地元である隠岐の島を離れることに。

 

・親元から離れる

親元から離れ、入学後は寮生活に。陸上のすごい選手と同じ部屋で緊張。

 

・県内一の進学校、さらに特進クラス

それまではあまりやらなくても出来るほうで、勉強で困ったことはなかった。しかし、周りが出来る人ばかりの環境になり、初めて、自分が出来ないという状況に直面。

 

症状が悪化した原因

色々な要素(進学校の特進クラス、姉妹暮らし、家事、部活(レギュラーで練習は毎日))が積み重なり、どんどん疲れていった。

 

家庭環境

親の躾は少し厳しい(勉強や門限)。四人姉妹の三番目。父母との関係に特に問題はなく、姉妹間も仲良し。

おじいちゃんとおばあちゃんと住んでいた。姉や妹と比較されることが多く、おじいちゃんとおばあちゃんに見てほしい、注目してほしい気持ちが常にあった。

 

学校環境

県内一の進学校、その仲でも特進クラス。

高校の人たちは、島の人と性格がちょっと違う(都会の人って感じ)。でも持ち前の人当たりの良さで上手くいっていた。しかし、クラスの中心にはいたものの、頑張って上手くいっていた感じだったからそれが疲れた。

文武両道で、部活も毎日。

 

性格

完璧主義、ストイック、承認欲求がすごくある、寂しがりや、目立ちたがり屋、負けず嫌い、競争心、食べることが好き。

 

ダイエット

気にはしていたけど、めちゃくちゃ気にしていたわけではない。アプリでカロリー計算するくらい(特に制限したり、我慢したりはない)。

 

その他

下剤を始めたきっかけ

ネットでみた。最初は少なかったけど、どんどん量が増える。(最後は90錠に)

 

ストレス解消=食べることだった

もともと食べるのが好きで、ストレス解消で食べることもあった。

 

克服中

完治までのプロセス

鬱病になる→非嘔吐過食、下剤、鬱(約2年3ヶ月)→下剤をやめるが、非嘔吐過食、鬱(約3年9ヶ月)→ブログ書く、完治(約1ヶ月)

 

各ステージでの「食」、「運動」、「生活」、「メンタル」の大体の状態

非嘔吐過食、下剤、鬱(約2年3ヶ月)

毎日一食か二食でどちらも過食。過食するものは米、パン、弁当などの炭水化物中心。特に菓子パンを過食。その後下剤を飲む。

運動

真夏なのに、上に5枚、下に3枚着て2~3時間ウォーキング。

全身にラップを巻いて、半身浴を2~3時間。

生活

不登校。(行っても保健室)。

過食以外は寝る生活。家事も勉強もできない。

14時に起きて過食して、18時に下剤を飲んで、23時~翌朝6時はトイレに篭る生活。

メンタル

自殺願望。止めたいけど止められない。どうしたらいいか分からない。

 

下剤をやめるが、非嘔吐過食、鬱(約3年9ヶ月)

過食の頻度は月3回くらいまでに減る。過食するときは、コンビニで米、おでん、お菓子など4000円分くらいを一気に食べる。

普段は自炊で三食バランス良く、間食も程よくする。

運動

気が向いたら、たまに走るくらい。

過食後は半身浴を2時間することも。

生活

バイト、学校で毎日忙しい。

朝は8時起床、夜はバイトで遅くなり、3時就寝になることも。

過食の時はバイト終わりや飲み会終わりに、夜中まで食べていた。翌日は昼過ぎに起きて学校にいかないことも。

メンタル

前よりは落ち込みにくくなる。しかし、定期的に病む。無力感、頑張れない感、自殺願望、絶望感を感じる。

 

ブログを書き、完治(約1ヶ月)

              

過食なし。

自炊で一日3食バランス良く。

間食や飲み会も行く。

運動

なし。

通学で歩くくらい。

生活

6時起床、11時就寝。

毎日忙しい。

メンタル

へこまない。落ち込まない。

体重は気にするけど、あまり変わらない安心感と次の日に調整できる。

そこまで食べ物を渇望しない。

たまにヤケ食いはあるけど、量は全然少ないし、罪悪感ない。

 

過食のスイッチだったこと

これだけしか食べないという自分の基準以上に食べたとき

自分の許せる満腹感以上の満腹感を感じるとき

体力的に疲れたとき

日常の小さなストレスを感じたとき(彼氏と上手くいかないなど)

 

克服に一番有効だったこと

1.下剤やめたこと

2.やめるって決意して言葉にしたこと(ブログ)

 

重要だった、転機となった出来事

1.大学入学

知り合いがいない大学に入学したため、自分のことを知らない人ばかり。今までの自分から切り替え、仕切り直しという気分になった。完璧主義だからゼロからの環境の方が頑張れた。

 

2.彼氏ができて、下剤をやめた

初めて会うときは下剤を使ったが、それ以降は下剤をやめた。

彼氏には摂食障害のことは言っていなかった。

自分の居場所という感じがして、安心して離せた。

ほがらかで、自分をそのまま受け入れてくれる人だった。

 

3.ブログやSNSで他の摂食障害の人を見て、こうなりたくないと思った

ブログやTwitterを通じて、摂食障害の人と繋がったことで、初めて客観的に自分を見ることが出来た。ネットの世界ではあまりにひどく病んでいる人や摂食障害を武器にしているような人たちが多く、こんな風になりたくないと思う一方、普通の人からみたら自分もこんな感じに映っているんだと思った。

 

4.ブログでやめることを宣言

下剤をやめてからの三年間、過食をすることに慣れてきて、どこかで過食を自分からしにいっていたというか、甘えていた部分があり、なあなあになっていた。

やめると宣言したことで、本当にやめる覚悟ができ、本当にやめようと気が引き締まった。これ以降は過食ではなくて、ヤケ食いであり、症状ではなく、自分の責任の問題という風に捉えることにした。

完璧主義だから自分で区切りをつけたことで、トントン拍子に治っていった。

 

5.ハワイへの短期留学

ずっと急がしかったから、ゆっくりと自分を見直す良い機会になった。

自分自身にお金と時間を目一杯使うことができた。

女の子であることを楽しめた。(服、ネイル、おしゃれ、買い物)

 

6.病まない人、元気な人との出会い

G1カレッジの活動を通じ、世界で活躍する人々と出会い、彼らの元気さ、ポジティブさに圧倒された。病んでいる自分はださいなと思った。

 

克服中に試したこと

摂食障害を治すためにやったことはない

しかし、結果的に治すことに良い影響を与えたものはいくつかある。

 

・病院に行き、鬱病の薬を飲んだ

・落ち込まない、病まないことを意識する

・海外にいく

・自分がやりたいことだけをやる(ハワイでの5ヶ月)

・生活を全て見直す(タオル、化粧品、メイク道具、下着など、身の回りのもの全て新しくして、良いものを揃える)

・大学の友達と「女子力を高めよう」キャンペーンを行い、みんなでダイエットやメイクを頑張り、ずぼらを治す。

・おしゃれな朝ごはんを続ける。

・綺麗になるための努力をする。

 

克服後

現在の生活

              

一日二食(朝昼)で、何でも好きなものを食べる。バランスはそこまで気にしない。夜は我慢しているわけではなく、バイトで夜がかなり遅くなるため、食べないだけ。

運動

駅まで歩くくらい。

生活

6時起床、11時就寝。毎日忙しい。

メンタル

へこまない、落ち込まない。へこんでも切り替え早い。

 

ダイエット

痩せたい、きれいになりたいという思いはある。見た目にコンプレックスはあり、かわいい人や細い人はいいなあって思うし、人並みに劣等感もあるけど、それで死にたいとかではない。

ダイエットはしている。バイトで遅くなるから夜は食べないことと出来るだけ歩くことくらい。でも好きなものは食べるし、無理な感じではない。人との夜ご飯や飲み会は罪悪感なく楽しんで食べる。

 

進路、人生の捉え方

余裕ができ、追い込まれている感じがなくなった。落ち着いて物事を考えられるようになった。

すぐに病んだり、死にたい気持ちにならない。自分で自分のメンタルの状態をコントロールできるようになった。(疲れたら美味しいもの食べて寝ようなどと切り替えられる。)

今も完璧主義だけど、そこは割り切って理解した上で、それでも完璧を目指す人でいたいと思っている。

その一方、定期的に休みを取ったり、適度に自分でゆるさを作ったり、サボれるようになった。

 

現在の活動について

・G1カレッジという日本版ダボス会議にて、運営メンバーに2年連続選出。
摂食障害を告白したブログが大きな反響を呼び、全国を回り、直接会いにいっている。これまで100人以上から完治の連絡をもらう。
・他にもCM出演やライター活動、海外1人旅など、その時に「やりたい!」と思ったことを全力で楽しむ

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まとめ

「治った」の定義

自分でいいきれるか、どうか、自己判断によるもの。代償行為のあるなしじゃ決められない。

過食か無茶食いヤケ食いは自分の捉え方であり、自分がどこで線引きして、手放せる勇気を持てるかどうか。治っても食べ過ぎることはあるけど、それを過食という症状にするかどうか。

自分の中の摂食障害の割合がどんどん減っていって、最後は気持ち的に治ったといえるかどうか。

 

振り返ってみて

摂食障害になって良かったかと言うと、絶対的にならなかった方が良かったけど、なったからこそ得られたものがあるというのは、肯定したくないけど事実ではある。

あそこまで落ちたから今は病まないし、自分でコントロールできるし、余裕がある。

また、自分のだめな部分(すぐに病む、弱い)が見えたからなりたい自分(強い人、いつもきらきらしてる人)が見えた。また、自分がきらきらしていれば、周りに集まってくる人も変わり、周りに与える影響もいいものになり、不じゃなくて正の循環に入ることが分かった。

 

メッセージ

摂食障害を自分から手放せますか?」と聞かれて、「絶対に無理」「手放せるのかもしれないけど、不安」「手放したいけど、どうしたらいいか分からない」って、色々思う人がいると思う。まずは、この問いを真剣に考えて、「本当の」自分の気持ちを知ることで、今の自分の状況を理解することが何より大事だと思う。「本当は終われるってわかってる、でも今周りにいる人に離れてほしくない。」って、思っている人もいるかもしれない。1年前のわたしは、実際そう思ってた。だけど、高校1年の頃のわたしなら、「本当に治したいけど、絶対無理」って答えたと思う。

きっと治るのには段階があるから、一概には言えないけど、まず「心から治したい。でもどうしていいかわからない。」って人は、今無理に頑張る必要はないと思う。いつかあなたにも必ず訪れる。「あ、治せるかも」って思うタイミングが。そのタイミングがきたときに、勇気を持って手放せるかどうかが大事だから、今そう思えなくて本当に苦しい人は、とことん休んだらいい。周りのことも単位のことも、将来のことも考えなくていいから、とにかく「頑張れない自分」と上手く付き合うことが大事。摂食障害は絶対に甘えじゃないし、弱さではない。あなたのせいでなったわけじゃない。心の病気でもなく、わたしは本当に治療の必要な病気だと思う。だから絶対にあなたのせいじゃない。

だけど、あなたの意志で、決めないといけない時がくる。それは、「完治」が見えたとき。吐くことが当たり前になってない?下剤を使うことが普通になってない?摂食障害である自分が当たり前になってない?摂食障害は、「絶対に治さないといけないもの」ってゆう認識はある?長い苦しみのせいで、摂食障害のない自分の人生が、いかに素晴らしいものなのか、分らなくなってない?今あなたの周りにいる人は、病気のあなたじゃなくても絶対に離れたりしないし、摂食障害じゃないあなたには、これまで出会えなかったような人も集まってくる。愛されるようになる。

摂食障害の自分を受け入れるのは大事だけど、肯定してはダメ。苦しんでるのは一人じゃないけど、頑張ってるのも一人じゃない。もう十分に苦しんだから、もうそろそろ自分を許してあげようね。ちゃんと見てくれてる人はいるよ。

世界中の人たちが、今日もごちそうさまって笑顔で言えていますように。食べることに苦しむ人がいない世界になることを願って。 まほろ